真皮内メラニンを伴う老人性色素斑

 

まずは下の写真をご覧ください。

左右の同じような位置に同じくらいの大きさのシミがあるのでQスイッチルビーレーザー治療を行いました。

 

レーザー照射後2週間の状態が下の写真です。

左側にあったシミはきれいに消失していますが、右側のシミは残ったままです。

どうしてこのようなことが起こるのかと言えば、左のシミは一般的な老人性色素斑であったのに対して、右側のシミは真皮内にもメラニンが存在していたからです。

写真では非常に分かりにくいですが、治療前のシミの色調は左右で若干異なり、慣れてくると真皮内にメラニンがあるかどうか治療前に何となく判別できるようになります。

真皮内のメラニンは治療後2週間では消えませんが、真皮内のメラニン量が少なければ、、1回のレーザー治療だけで半年後にはほとんど消失してくれることが期待できます。

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次は上下に並んだ2つの老人性色素斑ですが、上と下のシミの色調が若干違うことがわかります。

特に上のシミの下半分は色が少し濃いというだけでなく、紫色がかっていて真皮内にもメラニンがありそうだとわかります。

 

下はQスイッチルビーレーザー照射後2週間の状態です。

やはり上のシミは下のシミに比べてシミの色が残っていて、特に下半分はレーザーが効いていないようにも感じます。

 

下は半年後の状態です。

半年後には上のシミもほとんど消えてしまいました。(下半分にはごくわずかに色が残っていますが、この程度なら2回目の治療はあえて必要ないでしょう)

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次は上まぶたと頬の老人性色素斑です。

頬のシミは褐色調であるのに対し、上まぶたのシミは紫色を混じたような色を呈していました。

 

下はQスイッチルビーレーザー治療後2週間の状態です。

頬のシミは完全に消失しているのに対し、上まぶたのシミはほとんど薄くなっていません。

治療前の頬のシミにはかなり濃淡の差がありましたが、濃い部分もきれいに消えていて、必ずしも濃いから消えにくいというわけではないことがわかります。

 

下はレーザー照射後半年の状態です。

上まぶたのシミもほとんど消失しています。

 

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最後は頬のシミですが、やはり紫色がかっていて色もかなり濃く、1回のレーザー治療では除去しきれない可能性が高く、そのことはあらかじめ患者様にも伝えてありました。

 

下はQスイッチルビーレーザー治療後2週間の状態ですが、やはりシミはほとんど薄くなっていません。

 

は半年後の状態です。

半年待って薄くはなりましたが、まだシミが残存しているので2回目のレーザー治療を行いました。

 

残っているのは真皮内のメラニンであるため、シミが改善するためには2回目のレーザー後さらに半年待つ必要があります。

下は2回目のレーザー後半年。

シミはほぼ完全に消失しました。

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老人性色素斑は本来表皮細胞の異常なのですが、時々真皮内にもメラニンが滴落していることがあります。

表皮内のメラニンだけであれば比較的簡単にシミを除去できるのに対し、真皮内のメラニンが消失するためにはレーザー照射後3ヶ月から6ヶ月は待たなければなりません。

レーザーによるシミ取りを行って、痂皮が取れると同時にシミが消えると思っていたのに、痂皮が取れてもシミが全然消えていないとショックを受けてしまいます。

メラニンが真皮内にあるかどうかは治療前の視診が重要で、的確に診断できるようになるためにはそれなりの経験が必要です。

レーザーで消えるはずのシミが消えないとクレームとなる可能性が高く、真皮内にメラニンが存在することが疑われる場合はそのことをあらかじめ伝えておく必要があります。

 

 

以前にもブログに書いたことがありますが、シミが思っていたようにすぐに消えなかったことから、とある患者様から恫喝暴言を浴びせられたことがあり、それが今でもトラウマになっています。

その人のシミも真皮内にメラニンがあり、レーザーを照射してもすぐには消えないかもしれないということは治療前にあらかじめ伝えてあったのですが、そんな私の説明には全然耳を傾けてくれてはいませんでした。

以前に他院のレーザー治療で簡単にシミが消えた成功体験があり、当院の治療でも簡単に消えると思っていたので私の説明を真剣に聞く必要はないと思われていたのかもしれません。

以前のシミは単純な老人性色素斑だったのに対し、当院で治療したシミは真皮にもメラニンがあったので簡単には消えなかったのです。

 

それまではレーザー治療の経験者の方が治療の理解を得やすいと勝手に信じていたのですが、現在は経験者の方がより慎重な説明が必要だと考えています。